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社会福祉法人 同愛記念病院

不整脈治療について

心臓の働き

心臓の働き

心臓は全身に血液を送り出すポンプの働きをしています。心臓は1日に約10万回、24時間休むことなく、収縮と拡張を繰り返しています。心臓には4つの部屋(右心房,右心室,左心房,左心室)があり、この4つの部屋が協調して拍動をくり返すことで、心臓から全身に効率よく血液を送り出します。血液は全身をめぐり、体の細胞に必要な酸素と栄養分を供給します。

心臓は電気刺激で動いている

心臓には規則正しく動くためのシステムが備わっています。洞結節から発生する電気信号(心臓を動かすための命令)が、心房から房室結節を経由して速やかに心室に伝わることで心筋が興奮/収縮します。(1分間に60~90回程度)

心電図は、心房や心室に伝えられる電気信号の刺激を検知して、波形として書き出したものです。

不整脈とは?

不整脈とは

心臓の電気信号が正常に伝達されなくなると、心臓の拍動が不規則になります。これが不整脈です。不整脈にはたくさんの種類があり、動悸・息切れ・めまい・ふらつきなどの多彩な症状をきたします。全く症状がないものもあります。不整脈の治療法は、重症度や症状の程度によって決められます。重篤な不整脈は、意識消失や突然死のリスクがあり、早期の治療が必要になります。

不整脈の原因

不整脈の原因としてまずあげられるのは、加齢です。年齢を重ねるにつれて、刺激伝導系の働きが低下し、不整脈が生じやすくなると言われています。心筋梗塞や心筋症などの心臓の病気から不整脈が出ることもあります。その他、心不全や高血圧、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群 などの病気も、不整脈のリスクとなります。ストレス、睡眠不足、疲労、喫煙、飲酒などによっても不整脈は起こりやすくなります。

不整脈の種類

不整脈には様々な種類があります。
頻脈性不整脈、徐脈性不整脈、期外収縮の3タイプに分けられます。

  • 頻脈性不整脈:脈が速くなるタイプの不整脈です。1分間の脈拍が120回以上に達します。心臓の中で電気信号が異常に早く作られることや、異常な電気の通り道(副伝導路など)ができて電気信号が旋回してしまうことなどが原因で起こります。動悸、胸部不快感、めまい、失神などの症状があります。
  • 徐脈性不整脈:脈が遅くなる不整脈です。1分間の拍動数が60回以下になる不整脈です。心臓の中で電気信号が作られなくなったり、電気信号が途中でストップしたりするために起こります。 徐脈になると、安静時や軽い労作でも、めまいや息切れを起こすことがあります。
  • 期外収縮:正常で規則正しい脈に混じって、時々早い脈が入り込むのが期外収縮です。脈がとぶ感じがあります。期外収縮を起こしている場所によって、心房期外収縮・心室期外収縮に分けられます。

心房(上室)から起こる不整脈として、心房期外収縮、心房細動、心房粗動、発作性上室性頻拍(心房頻拍、房室結節リエントリー性頻拍、WPW症候群),があります。
心室から起こる不整脈として、心室期外収縮、心室頻拍、心室細動 があります。

頻脈性不整脈に対するカテーテルアブレーション治療 (心筋焼灼術)

カテーテルアブレーションとは

カテーテルアブレーションとは、カテーテルという細い管を血管から心臓に入れて、不整脈の原因となる電気回路を焼灼(アブレーション)して正常なリズムを取り戻す治療法です。薬物治療が不整脈の症状を抑えることを目的とした治療であるのに対し、カテーテルアブレーションは不整脈の根治を目指す治療法です。

カテーテルアブレーションの対象となる不整脈は、心房細動・心房粗動・心房頻拍・発作性上室性頻拍・心室期外収縮・心室頻拍です。
頻脈性不整脈のほぼ全てが対象になります。

近年、心臓の電位情報(心内心電図)やカテーテルの位置情報をリアルタイムに表示する3Dマッピング装置や、生理食塩水でカテーテルの先端を冷却しながら治療を行うイリゲーションカテーテル、カテーテル先端に冷却剤を注入して組織を凍結させる冷凍アブレーションなどが登場し、治療の安全性と有効性が向上しました。アブレーション治療適応も拡大しています。

当院では、最先端の三次元マッピングシステム(CARTO3 ver7)を導入しています。
不整脈の詳細な診断を行い、血管撮影装置による被曝も最小限に抑えています。

カテーテルアブレーションの方法

カテーテルアブレーション治療は、足の付け根や首,肩の静脈から電極カテーテルと呼ばれる直径数ミリの細長い管を挿入して行われます。心臓の中に複数のカテーテルを入れ、心臓の内側から心電図をとります(心内心電図)。通常の心電図では分からない、詳しい情報を得ることができます。不整脈中の電気の流れを分析することで不整脈を引き起こしている回路や発生起源を明らかにします。治療が必要な部位を特定し、カテーテル先端の電極から高周波を流すことで焼灼(アブレーション)を行い、不整脈の原因となる異常な電気回路を遮断します。
アブレーション治療後は、カテーテルを全て抜き、挿入部位を10~20分程度圧迫して止血します。
術後はしばらくベッドの上で安静が必要です。

カテーテルアブレーション治療の成功率

アブレーション治療の成功率は不整脈により異なります。心不全や心筋梗塞などを合併した頻拍では成功率は若干低下します。再発した場合には、もう一度手術を試みるか別の治療法に変更するか、個々の患者様ごとに検討します。

  • 発作性上室性頻拍や心房粗動では、約90%の成功率
  • 心房細動では、初回のアブレーションでの成功率は発作性心房細動の場合 約80%、
    持続性心房細動の場合 約60-70%です。
    再発例では2-3回の追加治療を行うことで、発作性心房細動 約90%、持続性心房細動 約80% の成功率です。
  • 心室期外収縮や特発性心室頻拍では、約80%の成功率

カテーテルアブレーション治療の合併症

カテーテルアブレーション治療では、次のような合併症が起きることがあります。しかし、生命の危機に関わるような重篤な合併症は非常に稀で、大部分は軽度なものです。不整脈の種類によって、起こり得る合併症は異なります。

これらの合併症が起こらないようにスタッフ全員が十分注意しておりますが、十分な予防策を講じたにもかかわらず以下の合併症が発生した場合には、緊急での対応を行わせて頂きます。

  • 心タンポナーデ
    →心臓の周りに溜まった血液を抜く処置(心嚢穿刺)や外科的処置を必要とすることもあります
  • 気胸(血気胸)
  • 血栓症(脳梗塞を含む)
  • 房室ブロック
    →まれにペースメーカ植込みが必要
  • 皮下血腫、穿刺部位の内出血、仮性瘤形成
  • 血管損傷
  • 横隔膜麻痺
  • 食道炎や左房-食道瘻などの食道合併症

アブレーション治療の麻酔管理

当院では患者さんが苦痛・不安を感じないことを目指し、術中の麻酔管理として、全身麻酔下のアブレーションを行っています。患者さんの状態によっては、局所麻酔と静脈麻酔を併用した中等度-深鎮静を行います。
焼灼に伴う痛みや麻酔薬による呼吸抑制から、術中の呼吸が不安定になると、カテーテルの安定性が悪くなり、治療成績や安全性が低下します。全身麻酔を行うことで、術中の苦痛を排除するだけでなく、呼吸も安定し、治療成績や安全性が向上します。とくに睡眠時無呼吸症候群があり鎮静中に呼吸が不安定になることが予測される方や、長時間の手術が予想される方では全身麻酔を行います。痛みに対する恐怖心から全身麻酔を希望される方も全身麻酔を選択することは可能です。

治療時間と入院期間

カテーテルアブレーション治療を受けるための入院期間は、基本的に2泊3日です。患者さんの病状や不整脈の種類により入院期間は異なります。アブレーション治療時間は、約2~4時間です。術後はしばらくベッド上での安静が必要です。翌日問題なければ、ベッドを離れて歩くことができます。退院後は1~2カ月に1度の外来で様子を確認します。

アブレーション治療にかかる費用

カテーテルアブレーション治療では入院や様々な検査が必要となることから、一般的には自己負担額が100万円以上かかってしまいます。そのため、「高額療養費制度」を利用することをお勧めします。医療保険制度の1つである高額療養費制度を利用することで、月の医療費負担が10万円前後まで軽減します。高額療養費制度とは、1ヵ月の医療費の自己負担額が高額になってしまった場合、自己負担限度額を超えた分は払い戻しを受けられる国が定めた制度です。自己負担限度額は、年齢や所得、治療期間、回数、医療保険の種類、生活保護受給などによって異なりますので、詳しくは、ご自身が加入されている医療保険をご確認ください。

心房細動に対するカテーテルアブレーション

心房細動はどんな不整脈なのか

心房細動とは

心房細動は、心房が小刻みに震え、不規則に拍動する不整脈の一種です。心房細動は、異常な電気信号が洞結節以外で発生して心房は無秩序な状態(痙攣している状態)になり、その電気信号が不規則に心室に伝わるため、脈はバラバラになります。

心房細動の発生率

心房細動は最も頻度の高い不整脈で、日本では約100万人が心房細動を持っていると推定されています。加齢とともに起こりやすくなるといわれていますが、心臓病のない若い方にも起こることもあります。精神的ストレスや睡眠不足、アルコールやカフェイン摂りすぎ、不規則な生活などの要因でも引き起こされます。また、高血圧,糖尿病,冠動脈疾患,心不全,心臓弁膜症,呼吸器疾患,甲状腺機能障害などは、心房細動を引き起こす可能性のある疾患として知られています。

心房細動の症状

心房細動が起こると脈拍は不規則になり、動悸(ドキドキする)・めまい・胸の不快感・息が切れやすい・疲れやすい などの症状がでます。患者さんによって症状の程度はさまざまで、全く無症状の人もいます。脈拍が早い状態が長く続くと心臓に負担がかかり、心不全に陥ることもあります。心房細動自体は致死的な病気ではありませんが、脳梗塞や心不全を引き起こすリスクがあります。

心房細動のタイプ

心房細動は、発作の持続期間によって「発作性」「持続性」「長期持続性」「永続性(慢性)」に分けられます。心房細動は、徐々に慢性化(発作性→持続性)する特徴があります。そして発作時間が長くなるほど(心房細動が進行するほど)、治療後の再発リスクも高くなるといわれています。

  • 発作性心房細動:短時間(7日以内)で自然に止まる
  • 持続性心房細動:7日以上続く(薬や電気的除細動で止まる)
  • 長期持続性心房細動:1年以上続く(薬や電気的除細動で止まる)
  • 永続性(慢性)心房細動:薬や電気的除細動でも止まらない

心房細動の合併症リスク: 脳梗塞・心不全

心原性脳梗塞

心房細動が起こると、ポンプの力が低下し、心房内で血液の「よどみ」が生じ、血栓(血液のかたまり)ができやすくなります。心房内にできた血栓は、左心房から血流にのって脳へ運ばれ、心原性脳梗塞を引き起こす危険性があります。心房細動が引き起こす心原性脳梗塞では、他の脳梗塞よりも広い範囲で脳がダメージを受け、社会復帰できる確率は約50%と報告されています。

心房細動の患者さんが脳梗塞を発症するリスクを評価する指標としてCHADS2スコアがあります。心不全・高血圧症・糖尿病・75歳以上・脳梗塞の既往のある人は発症リスクが高く、合計点が高いほど脳梗塞の発症リスクが高くなります。CHADS2スコアが1点以上ある方は、抗凝固薬が推奨されています。

心不全

心房細動になり心拍の速い状態(頻脈)が続くと、心臓全体に負担がかかり、心臓のポンプとしての機能が低下してしまう『心不全』の原因にもなります。頻脈誘発性心筋症という病態です。心不全になると、日常生活が制限され、時に命にかかわります。そのため、心房細動の予防・治療が重要になります。

心房細動の治療

心房細動の治療には、

  1. 基礎疾患の治療やリスク因子の管理(血圧・血糖管理)、生活習慣の見直しが重要です。
  2. 心原性脳梗塞の予防に、抗凝固療法(血液をサラサラにする薬剤)を行います。
  3. 心房細動の治療には、心房細動と付き合いながら脈拍の調整を行う治療法(レートコントロール)と、心房細動そのものを起こらないように、または、起きてもすぐに治るようにする治療法(リズムコントロール)があります。
    レートコントロールでは、主に薬物療法が行われます。心房細動の状態が続きますので、継続的な抗凝固薬の内服が必要です。
    リズムコントロールでは、抗不整脈薬による薬物療法と心房細動の根治を目指すカテーテルアブレーション治療があります。

心房細動は、早期に適切な治療を行うことで、脳梗塞発症のリスク軽減や根治を目指すことを期待できます。心房細動が心不全増悪の一因となっている場合には、心房細動そのものを治療することで、予後が良好になる可能性があります。

心房細動に対するカテーテルアブレーション(カテーテル心筋焼灼術)

心房細動の原因となる異常興奮の90% は肺静脈から発生しているといわれています。肺静脈とは、肺で酸素を供給された血液が心臓に帰ってくる血管で、左心房に上下左右、合計4本あります。心房細動に対するカテーテルアブレーションは、この異常興奮が肺静脈から左心房に伝播するのを防ぐことを目標に行われており、「肺静脈隔離術」と呼ばれます。治療方法は、肺静脈周囲を上下の肺静脈をまとめて囲い込むように焼灼する方法(両側肺静脈拡大隔離術)が一般的です。肺静脈周囲を焼灼することにより、肺静脈内から発生する異常興奮が心臓に伝わらず、心臓の脈が正常に保たれると考えられています。

カテーテルアブレーションの種類

高周波電流を使って心房細動の原因発生部位を焼く方法と、冷却剤を使って原因発生部位を凍結させる方法、レーザー光を照射して原因発生部位を焼く方法があります。また、形状にも大きく2種類あり、先端に金属の電極がついた電極カテーテルや、先端に小さな風船がついたバルーンカテーテルがあります。

高周波カテーテルアブレーションの方法

  1. 右足の付け根から(必要に応じて左側から) 3本のカテーテルを静脈(大腿静脈)に挿入し、また、左肩(左鎖骨下静脈)より1本のカテーテルを挿入し、透視下に心臓内へカテーテルを進めます。
  2. 経心房中隔穿刺法により、右心房側から左心房側へカテーテルを進めます。
  3. 各々の肺静脈領域の入口部付近にカテーテルを置き、その先端から30~40Wの高周波エネルギーを加えて15~30秒間の通電をくり返し行い、左心房内の心房細動の発生源とされる両側の肺静脈を取り囲むように焼灼します。また、必要に応じて左心房内を線状に焼灼します。
  4. 心房粗動合併例では、心房粗動の根治のために三尖弁輪~下大静脈間の線状焼灼を追加します。
  5. 治療後は、全てのカテーテルを体外へと抜去し、止血します。
  6. 帰室後は最低6時間の安静を要します。

心房細動アブレーションの治療成績

心房細動では、初回のアブレーションでの成功率は発作性心房細動の場合 約80%、持続性心房細動の場合 約60-70%です。再発例では2-3回の追加治療を行うことで、発作性心房細動 約90%、持続性心房細動 約80% の成功率です。

持続性心房細動では、発作性心房細動と比較して、アブレーション治療の成績は十分ではありません。心房が大きく拡大し、電気的に不安定な部分が多いためです。心房細動が2年以上持続していた場合は、さらに成績が落ちることが示されています。必要に応じて抗不整脈薬を併用することもあります。

再アブレーション

新規アブレーション後、一時的に心房細動や心房頻拍の再発が見られることがあります。その原因は、焼灼部位の伝導再開や新たな起源によるもののほかに、焼灼(やけど)に伴う炎症の影響も考えられます。術後、やけどが落ち着いてくるまでの約3ヶ月間は様子を見ていただき(「ブランキング期」といいます)、その期間を過ぎても心房細動を認めるようであれば2回目のアブレーション治療を検討させていただきます。

抗凝固療法

術後は、患者さんごとの血栓塞栓症リスクをふまえた上で、3-6ヶ月以上の経過観察で再発がなければ抗凝固療法の中止を考慮します。脳梗塞の既往など血栓症リスクの高い方では、抗凝固療法を継続していただきます。

入院期間と退院後の生活について

心房細動アブレーション治療を受けるための入院期間は、基本的に2泊3日です。患者さんの病状や不整脈の種類により入院期間は異なります。アブレーション治療時間は、約2~4時間です。術後はしばらくベッド上での安静が必要です。翌日問題なければ、ベッドを離れて歩くことができます。退院後は1~2カ月に1度の外来で様子を確認します。

ペースメーカ治療について

ペースメーカの適応になる疾患

心臓には規則正しく動くためのシステムが備わっています。洞結節から発生する電気信号(心臓を動かすための命令)が、心房から房室結節を経由して速やかに心室全体に伝わることで、心臓は全体に統制のとれた収縮と拡張を行います。これらの一連の流れは刺激伝導系といわれ、通常1分間に60~90回、規則的にくり返されています。

徐脈は脈が遅くなる不整脈で、脈拍数が1分間に50回以下のものをいいます。脈拍が極端に遅くなると、脳や全身への血液供給が乏しくなり、めまい、眼前暗黒感、失神、息切れ、呼吸苦、易疲労感などの症状を来たし、心不全や突然死の原因になることもあります。このような徐脈性不整脈に対してペースメーカを植込むことになります。

徐脈の代表的な疾患として①洞不全症候群 ②房室ブロック ③徐脈性心房細動 があります。

洞不全症候群

拍動の信号を出す刺激伝導系のスタート部分になる洞結節の機能が低下することで、脈が遅くなります。
原因として心筋症や膠原病,心筋炎,虚血性心疾患,心臓の手術,また薬剤によるものなどありますが、原因が分からないことも多いです。洞結節は自律神経やホルモンの影響をうけるので、それらの異常によってこの病気が起こることもあります。原因が分からなかったり、原因の病気の治療を行っても洞結節の機能がもどらず、またこの病気のために失神,めまい,ふらつき,疲れやすいなどの症状があったりする方は、ペースメーカを留置する必要があります。

房室ブロック

刺激伝導系の異常で心房から心室への電気信号がブロックされたり、うまく伝わらなくなる病気です。
原因としては、心筋梗塞などの虚血性心疾患,サルコイドーシス,アミロイドーシス,心筋症,心臓の手術,薬剤によるもの,高カリウム血症 などがあります。房室ブロックには、電気刺激の伝わりにくさによって1度から3度という重症度があります。3度房室ブロックは完全房室ブロックとも言い、その名の通り心房と心室の間の刺激伝導系が完全に途切れてしまっている状態です。完全房室ブロックは突然死のリスクがあり、症状の有無にかかわらず、ペースメーカを留置する必要があります。

徐脈性不整脈の治療

徐脈を来たす可逆性の原因・誘因がある例では、これらの原因・誘因の除去によって病態が改善することもありますが、不可逆的な場合も多いのが現状です。徐脈に対する薬物治療は、効果が不十分で通常は行われません。ペースメーカによる治療は、徐脈に対する唯一の(最も有効的な)治療法で、めまい、ふらつき、失神などの症状がある方は、ペースメーカを留置する必要があります。完全房室ブロックは突然死のリスクがあり、症状の有無にかかわらず ペースメーカを留置する必要があります。ペースメーカ治療は、①徐脈に伴う症状(めまい、失神)の改善 ②突然死の予防 ③心機能低下・心不全の予防や改善 を目的とします。

ペースメーカ治療

ペースメーカとは、脈が遅くなったときに、代わりに命令を出す人工臓器の一種です。本体(ジェネレーター)と電線(リード)からなります。本体(ジェネレーター)は前胸部の皮下へ植込み、そこから電線(リード)を心臓の内部へ入れて、留置します。ペースメーカは心臓の状況を24時間 常に監視し、必要時に命令を出します。ペースメーカ移植術は身体への負担がきわめて小さく、高齢の患者様、他に重い病気がある患者様でも安全に行なうことができます。

ペースメーカ植込み術

手術の前日までに、血液検査、心電図検査、レントゲン検査、心臓超音波検査などで心臓や全身の状態をチェックします。手術当日は、点滴・膀胱カテーテル・手術着への更衣などの準備をします。手術は局所麻酔で行います。左あるいは右の前胸部を5cmほど切開し、皮下にペースメーカを入れる「ポケット」を作成します。続いて鎖骨の下の静脈を通してリードを心臓内(心室または心房、あるいは両方)に留置します。適切な位置にリードを留置した後、リードと本体を接続し、傷を縫い合わせます。手術の所要時間はおよそ2~3時間です。

合併症

ペースメーカ移植術は安全な手術ですが、それでも合併症は皆無ではありません。ただし、後遺症を残すような重篤な合併症の頻度は0.1%未満で、死亡例はほとんど報告されていません。

  • 気胸
  • 血胸
  • 出血
  • 血腫
  • リード穿孔
  • 感染:頻度は0.5~2.0%と報告されています。感染予防に、抗生剤を投与します。
  • リードの移動:手術後にリードの位置がずれてしまった場合は、再手術が必要となります。

手術後から退院まで

手術後は約3時間ベッド上で安静を保っていただきますが、翌日は歩いて結構です。合併症やリードの移動などを確認するために、適宜、血液検査や心電図検査、胸部レントゲン検査などを行います。約1週間後のチェックで問題なければ、退院できます。

ペースメーカは電子機器ですので、強い電波や磁気によって作動不良を起こすことがあります。携帯電話は15cm以上離せば問題ないことが分かっています。その他に注意しなければならない機器、状況については、入院中にくわしく説明します。

退院後の定期検査

退院後は2~3カ月後にペースメーカ外来を受診していただき、機器の作動状況を確認します。その後も年1~2回程度ペースメーカ外来を受診していただきます。定期検査では、ペースメーカが正常に作動しているか、電池の残量はどのくらいかなどを確認します。また、患者さんの体調に合わせてペースメーカの調整を行うこともあります。
もちろん、お薬を服用している患者様では、通常の循環器外来への通院も必要です。

当院では、自宅にいながらペースメーカチェックを受けられる「遠隔モニタリング」も行っています。

電池やリードの交換

標準状態の設定で、手術後10年でペースメーカの電池が消耗するため、本体部分を交換しなければなりません。この期間は患者様の状態により多少変化します。 通常、交換手術は、ペースメーカ本体のみを交換するため比較的短時間ですみます。ただし、リードに異常があった場合は、新しいリードを追加する場合もあります。

MRI検査について

これまではペースメーカ植込み後はMRI撮影ができませんでしたが、2012年10月よりMRI対応ペースメーカが登場しました。ただしMRI撮影時にはペースメーカの設定変更が必要なため担当医にご相談ください。

ペースメーカ移植術後の手続きについて

  • ペースメーカ手帳
    ペースメーカを植込まれた方にペースメーカ手帳をお渡しします。この手帳は、ご本人と医療施設・医療機器・定期検査などの情報を記録するためのものです。心臓以外の疾患や不慮の事故、または旅行などで普段フォローアップしている医療施設ではない施設にかかる際にも、この手帳があれば検査や治療がスムーズになります。
  • 身体障害者の認定について
    ペースメーカ移植術を行なった患者様は、身体障害者福祉法により身体障害者の認定を受けることが出来ます。障害の等級は、患者さん自身の身近な日常生活活動や家庭内・社会での日常生活活動に対する制限の程度、他の障害の有無などにより決定されます。

リードレスペースメーカ

2017年9月からリードレスペースメーカが使用できるようになりました。

リードレスペースメーカはカプセル型で、小さなフックで右心室の壁に取り付けられ、先端の電極を通じて心室へ電気刺激を送り、ペーシングを行います。従来のペースメーカと同様の機能で、重さ1.75g、1ccにまで小型軽量化され、電池寿命は最長12年です。本体が皮下にないため、本体による皮膚トラブルはありません。なお、MRI検査も可能となっています。

リードレスペースメーカはすべての方に適応となるわけではなく、患者様の不整脈のタイプやご病状に応じて、従来のペースメーカがより望ましいと判断される場合はそちらを選択することもあります。担当医にご相談ください。

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