2023年10月から同愛記念病院に『同愛IBDセンター』を開設いたします。
IBDはinflammatory bowel diseaseの略で、炎症性腸疾患を指します。炎症性腸疾患は広い意味では腸に炎症を生じる疾患全てを意味しますが、一般的にIBDと言えば、非特異性炎症性腸疾患である潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)とクローン病(Crohn’s disease:CD)の2疾患を意味します。
近年、潰瘍性大腸炎とクローン病患者数は増加しているにもかかわらず、両疾患を診療できる病院が少ないのが現状です。このたび内科と外科が協力してIBDセンターを立ち上げ、より良いIBD診療を行ってまいります。
初めて受診される方は、IBDセンターのご予約をお取りください。
当日の予約も可能ですが、なんらかの事情で休診の場合もありますので、必ずお電話にてご確認していただくようお願いいたします。
「原因不明の非特異性炎症が、大腸の粘膜・粘膜下層に、びまん性・連続性に発生する慢性炎症性疾患」です。簡単に言うと、大腸に炎症が発生する病気で、原因はわかっていません。他の腸炎(感染性の腸炎や憩室炎)を除外する必要があります。
日本でも世界でも年々増加しており、現在は日本で22万人ほどの患者数と言われています(図1)。
発症するのは20代、30代が多いと言われていますが、高齢者で発症することも少なくありません。一度発症すると一生つき合う病気なので、高齢の潰瘍性大腸炎患者さんも多くいます。
症状は血便、下痢、腹痛、発熱です。特に血便は粘液が混じったトマトケチャップ様であることが特徴です。
大腸内視鏡検査で観察します。中等度の炎症では血管透見像消失、発赤、膿性粘液付着があり、高度の炎症では潰瘍形成、易出血性がみられます(図2a,2b)。生検を取って顕微鏡検査を行います(図2c)。注腸X線検査を行うこともあります。
直腸炎型、左側大腸炎型、全大腸炎型があります。直腸炎型が左側大腸炎型や全大腸炎型に進展することがあります。
初回発作型、再燃寛解型、慢性持続型、急性劇症型があります。とくに急性劇症型は突然発症し、急激に悪化するため緊急手術が必要になります。
排便回数、血便、発熱、頻脈、貧血、赤沈などのデータから分類します。中等症以上で医療受給者証を取得できます。
完治させる薬物療法はありません。病勢をコントロールし、患者さんのquality of lifeを高めることが目的です。
5-アミノサリチル酸製剤、ステロイド、免疫調節薬、顆粒球吸着療法、分子標的薬などがあり、病状に応じて治療を選択します。
中毒性巨大結腸症、大量出血、大腸穿孔などの場合は、救命のため緊急手術(開腹手術)を行います(図3,4)。結腸を切除し、小腸の人工肛門を造設します。数ヵ月後に残った直腸を切除します。
難治、狭窄、腫瘍などの場合は、待機的に手術(腹腔鏡手術)を行います(図5)。一般的には大腸全摘術を行い、小腸と肛門近くで吻合し、人工肛門を造設します。
人工肛門は後日、閉鎖を試みますが、残念ながら永久的な人工肛門の場合もあります。
大腸のほとんどを切除するため、術後の合併症としては頻便、下痢、便漏れ、回腸嚢炎、腫瘍発生などがあります。
「原因不明の肉芽腫性炎症病変が、全ての消化管(口腔~肛門)に、全層性に(粘膜・粘膜下層と筋層)、区域性(非連続性)に発生する、慢性炎症性疾患」です。大腸だけでなく消化管全体に炎症が発生してくる病気で、原因はわかっていません。他の腸炎(感染性の腸炎や憩室炎)を除外する必要があります。肛門病変、とくに痔瘻を合併しやすいことに注意が必要です。
日本でも世界でも年々増加しており、現在は日本で7万人ほどの患者数と言われています(図6)。
発症するのは10代、20代が中心です。しかし一度発症すると一生つき合う病気なので、高齢の潰瘍性大腸炎患者さんも多くいます。
腹痛、下痢、体重減少、発熱、貧血、肛門病変、全身倦怠など多彩です。
大腸内視鏡検査で観察し、生検を取って顕微鏡検査を行います。上部消化管内視鏡検査、小腸内視鏡検査、カプセル内視鏡検査、小腸造影検査、注腸X線検査を行うこともあります。縦走潰瘍(図7)、敷石像(図8)、狭窄、瘻孔形成、非乾酪性類上皮細胞肉芽腫(図9)などがみられます。
小腸型、小腸大腸型、大腸型があります。
腹痛、排便回数、肛門病変、体重減少、発熱、腹痛、貧血などのデータから算出します。医療受給者証を取得できます。
完治させる薬物療法はありません。病勢をコントロールし、患者さんのquality of lifeを高めることが目的です。
栄養療法、5-アミノサリチル酸製剤、ステロイド、免疫調節薬、顆粒球吸着療法、分子標的薬などがあり、病状に応じて治療を選択します(図10)。狭窄部に対して内視鏡で拡張することもあります。
腸管穿孔や大量出血、膿瘍、腸閉塞などの場合は、救命のため緊急手術を行います。病変部位や病状に応じて切除し、必要なら人工肛門を造設します。
腸管狭窄(図11)、瘻孔、薬物療法無効、腫瘍、肛門狭窄(図12)、痔瘻(図13)などの場合は、待機的に手術を行います。
残念ながら永久的な人工肛門の場合もあります。
頻便、下痢、便漏れ、吻合部狭窄、クローン病再発(ほぼ必発)などがあります。残念ながら一度手術をした患者さんのうち、術後10年以内に半数の人が再手術を受けることになります。