外科臨床研修プログラム初期臨床研修病院研修ガイド
はじめに
卒後研修の2年間を有意義に使い、社会に貢献の出来る医師となるため、その根本となる、基本的な能力、技能、知識、態度、人格などを幅広く習得し、これを実行できる総合力のある臨床医となることが望まれる。
外科研修の到達目標
一般目標
プライマリー・ケアの基本的な診断能力を身につけて、医師としての人格を涵養し、幅広い研修を行う。
行動目標(医療人として必要な基本姿勢・態度)
- 患者・家族と良好な人間関係を確立し、適切なインフォームドコンセントで患者の同意と信頼を得た上で、患者・家族に適切な指示。指導をおこない、納得のいく医療を行う。
- 守秘義務を果たし、プライバシーを侵害しない配慮ができる。
- チーム医療に徹し、他の医師、医療機関のほかの職種のメンバー、病診連携や関係機関の担当者と適切なコミュニケーションが取れ正確な情報交換が出来る。
- 指導医、専門医に正確で適切なコンサルテーションができる。
- 患者の問題に対し、EBMに基づいた判断ができ、問題対応能力を養い、臨床研究、学術集会に関心を寄せ、生涯にわたる自己学習の習慣を身につける。
- 医療をおこない際の安全確認につき、理解でき実行できる。
- 院内感染対策、医療事故安全対策、医の倫理・生命倫理などにつき理解でき、院内の各委員会のマニュアルに沿った行動ができる。
- 医療面接において、十分、患者の病歴の聴取と記録ができ、症例呈示ならびに討論ができる。
- 診療計画の作成ができ、診療ガイドライン、クリニカルパスの活用ができる。
- 緩和医療、在宅医療、在宅看護の重要性を理解し、患者サイドにたった総合的な管理計画を作成することができる。
- 医療の持つ社会性において、現行の保険医療制度を理解し、治療経費をふくめた、広い視野から適切な治療を行うことができる。
経験目標
1.経験すべき診療法・検査・手技
A.基本的な身体診察法
理学的所見を見落とし無く記載できる。
頭頚部、胸部、腹部の視診・触診・聴診、肛門直腸内診ができること。さらに四肢の診察ができ、神経学的所見が取れることが必須である。
B.基本的な臨床検査
全身麻酔下のmajor surgeryを受ける患者の術前検査項目につき、結果を解釈でき、追加検査の必要性の有無を判断できること。血算、血液型判定、血液交差適合試験、動脈血ガス測定、ECG(12誘導)、腹部超音波検査は自ら実施し、結果の解釈ができること。
- 入院時術前検査項目
血液型、感染症(HIV, Hbs-抗体, HCV抗原、梅毒)、血算、血液像、生化学血液検査、一般尿検査、腫瘍マーカー(CEA,AFP,CA19-9)。空腹時血糖値、血液凝固線溶系、肺機能検査、ECG、胸部。腹部単純X-Pは入院時検査としてセットされている。入院後、出血時間、動脈血ガス分析、Ccrをおこなう。 - 循環器系にリスクのある患者は必要に応じて、負荷心電図、UCG、CAGを追加し、専門医の指導の下に理解し解釈する。
- 消化器内視鏡検査(上部消化管、下部消化管、肝胆膵系)
- 超音波検査(腹部、甲状腺、乳腺)
- コンピューター断層写真
- MRI検査
- シンチグラム
- 血管造影検査
- 消化管造影X線検査
C~Iの検査について、指導の下に理解できる。
C.基本的手技
下記の基本的手技の適応を決定し、実施することができる。
- 気管確保
- 人工呼吸
- 心マッサージ゙
- 気管挿管
- 除細動
- 注射法(皮内、皮下、筋肉)、静脈確保、中心静脈確保
- 採血法(静脈血、動脈血)
- 穿刺法(腰椎、胸腔、腹腔)
- 圧迫止血法、包帯法
- 導尿法
- 胃管の挿入、管理
- 局所麻酔法
- 簡単な切開
- 創部消毒、ガーゼ交換、ドレーン管理
- 軽度の外傷、熱傷の処置
D.医療記録
- 診療録の作成
- 処方箋・指示書の作成
- 診断書の作成
- 死亡診断書の作成
- CPCプレゼンテーションと抄録の作成
- 紹介状、医療情報提供書、報告書の作成
2.経験すべき症状・病態・疾患
A.頻度の高い症状(順不同)
症状の訴えを経験し、鑑別診断して初期治療を的確に行う。
- 腹痛
- 嘔気、嘔吐
- 食欲不振
- 発熱
- 全身倦怠感
- 体重減少
- 胸やけ
- 便通異常
- 嚥下困難
- 吐血
- 下血
- 黄疸
- 腫瘍触知
- 嗄声
- 腹満
- 歩行困難、間歇的爬行
- 四肢疼痛、しびれ
B.緊急を要する症状・病態(初期治療に参加する)
- 心肺停止
- ショック
- 急性腹症
- 急性呼吸障害
- 急性消化管出血
- 外傷
- 熱傷
C.経験が求められる疾患・病態
指導医の指導の下に、3ヶ月の外科研修の間に、major surgeryの手術症例について1例以上、症例レポートを提出すること。
- 食道
食道癌、食道静脈瘤、アカラシア - 胃・十二指腸
胃癌、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、GIST、悪性リンパ腫 - 小腸・大腸
癒着性イレウス、絞扼性イレウス、急性虫垂炎、大腸憩室炎、非特異性大腸炎、穿孔性腹膜炎、結腸癌 - 直腸・肛門
直腸癌、直腸脱、痔核、痔瘻、裂肛、肛門ポリープ - 肝・胆・膵
肝癌(肝細胞癌、胆管細胞癌、転移性肝癌)、胆肝癌、胆嚢癌、膵癌、胆嚢結石、総胆管結石、胆嚢ポリープ、膵腫瘍、急性膵炎、慢性膵炎 - 乳腺・甲状腺・上皮小体・脾臓
乳癌、甲状腺癌、甲状腺腫瘍、上皮小体機能亢進症、脾腫 - 腹壁・腹膜・横隔膜
腹壁瘢痕ヘルニア、鼠径ヘルニア、大腿ヘルニア、食道裂孔ヘルニア
週間スケジュール
※横にスクロールできます。
月曜日 | 外科手術日 | |
---|---|---|
火曜日 | 08:20~09:00 | 術後症例検討会 |
16:30~18:20 | 部長総回診 | |
水曜日 | 08:30~09:00 | 抄読会 |
外科手術日 | ||
金曜日 | 08:20~09:00 | 術前症例検討会 |
外科手術日 | ||
17:00~18:00 | 病棟入院患者検討会 |
定期的カンファランス
※横にスクロールできます。
奇数月第4火曜日 | 18:30~19:30 | 外科・病理症例検討会 |
---|---|---|
偶数月第3木曜日 | 19:30~21:00 | 外科・すみだ医師会手術症例検討会 (日本医師会生涯教育セミナー) |
施設認定
- 日本外科学会専門医制度認定施設
- 日本外科学会認定医制度認定施設
- 日本大腸肛門病学会認定施設
- 日本呼吸器外科学会専門医制度関連施設
- 日本消化器外科学会専門医制度施設認定