治験業務手順書
第1章 総則
第1:治験の原則
- 第1 同愛記念病院治験取扱規則(以下「規則」という。)により実施する治験は、次に掲げる原則に従って行わなければならない。
- (1) 治験は、薬事法、同施行令、同施行規則、GCP省令及びGCP省令に関連する通知並びにヘルシンキ宣言を遵守して行われなければならない。
- (2) 治験を開始する前に、個々の被験者及び社会にとって期待される利益と予測される危険及び不便とを比較考慮するものとする。期待される利益によって危険を冒すことが正当化される場合に限り、治験を開始し継続すべきである。
- (3) 被験者の人権、安全及び福祉に対する配慮が最も重要であり、科学と社会のための利益よりも優先されるべきである。
- (4) 治験に関して、その治験の実施を支持するのに十分な非臨床試験及び臨床試験に関する情報が得られていなければならない。
- (5) 治験は科学的に妥当でなければならず、治験実施計画書にその内容が明確かつ詳細に記載されていなければならない。
- (6) 治験は、治験審査委員会が事前に承認した治験実施計画書を遵守して実施されなければならない。
- (7) 被験者に対する医療及び被験者のためになされる医療上の決定に関する責任は、医師又は歯科医師が常に負うべきである。
- (8) 治験の実施に関与する者は、教育、訓練及び経験により、その業務を十分に遂行しうる要件を満たしていなければならない。
- (9) 全ての被験者から、治験に参加する前に、自由意思によるインフォームド・コンセントを得なければならない。
- (10) 治験に関する情報は、正確な報告、解釈及び検証が可能なように記録し、取扱い、及び保存しなければならない。
- (11) 被験者の身元を明らかにする可能性のある記録は、被験者のプライバシーと秘密の保全に配慮して保護しなければならない。
- (12) 治験薬の製造、取扱い、保管及び管理は、治験薬GMPを遵守して行うものとする。治験薬は治験審査委員会が事前に承認した治験実施計画書を遵守して使用するものとする。
- (13) 治験のあらゆる局面の質を保証するための手順書を示したシステムが運用されなければならない。
- (14) 治験に関連して被験者に健康被害が生じた場合には、過失によるものであるか否かを問わず、被験者の損失は適切に補償されなければならない。その際、因果関係の証明等について被験者に負担を課すことがないようにしなければならない。
第2:目的と適用範囲
- 第2 本手順書は、GCP省令及びGCP省令に関連する通知に基づき、同愛記念病院(以下「本院」という。)において行う治験の実施に必要な手続きと運営に関する手順を定めるものとする。
- 2 本手順書は、医薬品の製造販売承認申請又は承認事項一部変更承認申請の際に提出すべき資料の収集のために行う治験に対して適用する。
第2章 治験審査委員会
第3:治験審査委員会の責務
- 第3 治験審査委員会は、第1に定める治験の原則に従って、全ての被験者の人権、安全及び福祉を保護しなければならない。
- 2 治験審査委員会は、倫理的、科学的及び医学的妥当性の観点から治験の実施及び継続等についての審査を行わなければならない。
- 3 治験審査委員会は、社会的に弱い立場にある者を被験者とする可能性のある治験には特に注意を払わなければならない。
第4:治験審査委員会の構成
- 第4 治験審査委員会は、病院長が次に掲げる者から指名する委員によって構成される。
- (1) 副院長
- (2) 内科系診療科の主任以上のうちから選ばれた者2名
- (3) 外科系診療科の主任以上のうちから選ばれた者2名
- (4) 本院において医学・歯学・薬学その他の医療又は臨床試験に関する専門的知識を有する者以外の者1名
- (5) 看護師長以上のうちから選ばれた者1名
- (6) 本院と利害関係を有しない者2名
- (7) 検査科部長
- (8) 薬剤科長
- 2 委員会に委員長を置く。委員長は副院長があたり病院長が委嘱する。
- 3 委員長に事故があるときは、委員長があらかじめ指名した者が、その職務を代行する。
- 4 第1項第2号から第6号までの委員の任期は2年とする。ただし、再任は妨げない。
- 5 委員等に欠員が生じた場合におけるその後任者の任期は、前任者の残任期間とする。
- 6 病院長は、治験審査委員会に出席することはできるが、委員になること並びに審議及び採決に参加することはできない。
第5:治験審査委員会の審査資料
- 第5 治験審査委員会は、その責務の遂行のために、次の各号に掲げる最新の資料について審査を行わなければならない。
-
- (1) 治験依頼書・治験申請書
- (2) 治験実施計画書並びに治験責任医師が治験依頼者と治験実施計画書の内容及びその遵守について合意した旨の文書
- (3) 症例報告書(治験責任医師と治験依頼者が合意したもの)
- (4) 同意説明文書及び同意文書(治験責任医師が治験依頼者の協力を得て作成したもの)
- (5) 被験者の募集手順(広告等)に関する資料(募集する場合)
- (6) 最新の治験薬概要書(対照薬がある場合はその医薬品に関する情報を記載した文書を含む)及び治験薬の概要(医学倫理的配慮を含めたもの)
- (7) 被験者の安全等に係わる治験責任医師及び治験依頼者からの報告
- (8) 被験者への支払いに関する資料(支払いがある場合)
- (9) 被験者の健康被害に対する補償に関する資料(治験実施計画書に被験者の健康被害に対する補償に関する事項を記載し、治験依頼者が補償を行うために必要な保険加入等については別途資料を添付する)
- (10) 治験責任医師の履歴書及び治験分担医師の履歴書
- (11) 予定される治験費用に関する資料
- イ.当該治験に要する経費のうち、診療に係わらない事務的な経費等であって治験の適正な実施に必要な経費(【研究諸経費】)
- ロ.治験に係わる診療に要する経費のうち、特定療養費の支給対象とはならない経費(【支給対象外経費】)
- ハ.当該治験に要する経費のうち、診療に係わらない経費等であって治験の適正な実施に必要な治験薬の管理に関する経費(【治験薬委託管理費】)
- ニ.当該治験に要する経費のうち、診療に係わらない経費等であって治験の適正な実施に必要な知的、人的経費(【委託研究費】)
- ホ.治験審査委員会の議事録作成に要する費用(【議事録作成費】)
- ヘ.当該治験に要する経費のうち、被験者の負担軽減を図る為の経費(【治験協力費】)
- ト.当該治験に必要な機械器具及び医薬品を購入するのに要する経費
- チ.治験のために行う検査・画像診断に関する経費
- (12) 治験の現状に関する資料(継続審査等の場合)
- (13) その他治験審査委員会が必要と認める資料
第6:治験審査委員会の審査内容
- 第6 治験審査委員会は、次の各号に掲げる事項について調査審議し、記録を作成する。
- (1) 治験を実施することの倫理的、科学的及び医学的見地からの妥当性に関する事項。
- イ.本院が十分に臨床観察及び試験検査を行うことができ、かつ、緊急時に必要な措置を採ることができる等、当該治験を適切に実施できること。
- ロ.治験責任医師及び治験分担医師が当該治験を実施する上で適格であるか否かを最新の履歴書により検討すること。
- ハ.治験の目的、計画及び実施が妥当なものであること。
- ニ.被験者に同意を得るに際しての説明文書の記載内容が、被験者に理解しやすく、かつ十分な説明がなされているか、又は定められた説明事項が適切な表現で説明されているものであること。なお、被験者の人権、安全及び福祉を保護する上で追加の情報が意味のある寄与をすると判断した場合には、厚生省GCP答申7-3以上の情報を被験者に提供するよう要求することができる。
- ホ.被験者の同意を得る方法が適切であること。なお、被験者の同意取得が困難な場合、非治療的な治験、緊急状況下における救命的治験及び被験者が同意文書等を読めない場合にあっては、厚生省GCP答申7-2-2、7-2-3、7-2-4、及び7-2-5に示された内容が説明又は遵守されていること。
- ヘ.被験者への健康被害に対する補償の内容が適切であること。(治験責任医師又は治験依頼者の過失によるものであるか否かを問わず、被験者の損失が補償されるか否か。)
- ト.予定される治験費用が適切であること。
- チ.被験者に対する支払がある場合には、その内容・方法が同意説明・同意文書及びその他の説明文書に記述されており、かつ適切であること。
- リ.被験者の募集手順がある場合には、募集の方法が適切であること。
- (2)治験実施中又は終了時に行う事項
- イ.被験者の同意が適切に得られていること。
- ロ.次に掲げる治験実施計画書の変更の妥当性に関すること。
- ① 被験者に対する緊急の危険を回避するなど医療上やむを得ない事情のために行った治験実施計画書の逸脱又は変更
- ② 被験者に対する危険を増大させるか又は治験の実施に重大な影響を及ぼす治験に関するあらゆる変更
- ハ.治験実施中に本院で生じた重篤な有害事象又は副作用について、当該治験の継続の可否に関すること。
- ニ.次に掲げる被験者の安全又は当該治験の実施に悪影響を及ぼす可能性のある重大な新たな情報について、当該治験の継続の可否に関すること。
- ① 他施設で発生した重篤で予測できない副作用
- ② 重篤な副作用又は治験薬及び市販医薬品の使用による感染症の発生数、発生頻度、発生条件等の発生傾向が治験薬概要書から予測できないもの
- ③ 死亡、又は死亡につながる恐れのある症例のうち、副作用によるもの又は治験薬及び市販医薬品の使用による感染症によるもの
- ④ 副作用若しくは治験薬及び市販医薬品の使用による感染症の発生数、発生頻度、発生条件等の発生傾向が著しく変化したことを示す報告
- ⑤ 治験の対象となる疾患に対し効能若しくは効果を有しないことを示す研究報告
- ⑥ 副作用若しくは感染症により癌、その他の重大な疾病、障害若しくは死亡が発生する恐れがあることを示す研究報告
- ⑦ 当該被験薬と同一成分を含む市販医薬品に関わる製造、輸入又は販売の中止、回収、廃棄、その他の保健衛生上の危害発生又は拡大を防止するための措置の実施
- ホ.治験の実施状況について少なくとも1年に1回以上調査すること。
- ヘ.治験終了、中止又は中断及び開発の中止等を確認すること。
- (3)その他治験審査委員会が求める事項
- (1) 治験を実施することの倫理的、科学的及び医学的見地からの妥当性に関する事項。
第7:治験審査委員会の運営
- 第7 治験審査委員会は、原則として月1回(8月・12月をのぞく)最終木曜日に開催する。ただし、病院長から緊急に意見を求められた場合、随時委員会を開催することができる。
- 2 治験審査委員会は、実施中の治験において治験の期間が1年を超える場合には、被験者に対する危険の程度に応じて、少なくとも年に1回、治験が適切に実施されているか否かを継続的に審査するものとする。なお、必要に応じて実施中の治験に関する検討状況(治験成績を含む)等を確認し、必要な場合には、病院長に意見を文書で通知するものとする。
- 3 治験審査委員会の開催に当っては、予め治験審査委員会事務局から原則として文書により通知するものとする。
- 4 治験審査委員会は、3分の2(第4-1項(4)、(6)の委員を含む)以上の委員が出席した会議においてのみ、その意思を決定できるものとする。
- 5 採決に当っては、審議に参加した委員のみが採決への参加を許されるものとする。
- 6 当該治験の治験依頼者との関係のある委員(治験依頼者の役員又は職員、その他治験依頼者と密接な関係を有する者)及び治験責任医師と関係のある委員(治験責任医師、治験分担医師、又は治験協力者)はその関与する治験についての情報を提供することは許されるが、当該治験に関する事項の審議及び採決への参加及び意見の表明はできないものとする。
- 7 委員長が特に必要と認める場合には、委員以外の特別の分野の専門家を委員会に出席させて意見を聞くことができる。
- 8 審査の採決は出席した委員全員の合意を原則とする。
- 9 判決は次の各号のいずれかによるものとする。
- (1) 承認する
- (2) 修正の上で承認する
- (3) 却下する
- (4) 既に承認した事項を取り消す(治験の中止又は中断を含む)
- 10 治験審査委員会は、審議及び採決に参加した委員名簿と各委員の資格に関する記録及び審議記録を作成し保存するものとする。
- 11 委員長は、治験審査委員会の審査結果について、速やかに病院長に治験審査結果報告書により報告するものとする。治験審査結果報告書には、次に掲げる事項を記載するものとする。
- (1) 治験審査委員会の名称と所在地
- (2) 治験審査委員会がGCPに従って組織され、活動している旨の陳述
- (3) 治験審査委員会の決定(第9項(2)の場合はその条件、また(3)及び(4)の場合はその理由)
- (4) 審査した治験名及び資料
- (5) 審査年月日
- 12 治験審査委員会は、承認済みの治験についての治験期間内の軽微な変更の場合には、次により迅速審査を行うことができる。なお軽微な変更とは、変更により生ずる危険性が、被験者の日常生活における危険性又は通常行われる理学的あるいは心理学的検査における危険性より高くない変更とする。
(何らかの身体的侵襲を伴う変更の場合は除く。)- (1) 迅速審査は、治験審査委員会委員長が行い、第9項に従って判定し第11項に従って病院長に報告する。
- (2) 迅速審査において治験審査委員会委員長は、必要に応じて他の委員の意見を求めることができるものとする。
- (3) 治験審査委員会委員長は、次回の治験審査委員会で迅速審査の内容と判定を報告しなければならない。
- 13 委員長は委員会開催に先だって、予め委員に意見を聞くことができる。
第8:記録の保存責任者
- 第8 治験審査委員会における記録の保存責任者は治験事務局長とする。
- 2 治験審査委員会において保存する文書等は以下のとおりとする。
- (1) 本業務手順書
- (2) 委員名簿(各委員の資格を含む)
- (3) 委員の職業及び所属のリスト
- (4) 提出された文書
- (5) 会議の議事要旨(審議及び採決に参加した委員名簿を含む)
- (6) 書簡等の記録
- (7) その他の必要と認めたもの
第3章 治験事務局
第9:治験事務局
- 第9 治験事務局は、治験審査委員会事務局を兼ねるものとし、治験の実施に関する事務及び治験審査委員会に係る事務を行うものとする。
第10:治験事務局の業務
- 第10 治験事務局は、病院長の指示により、次に掲げる業務を行うものとする。
- (1) 治験審査委員会の委員の指名に関する業務(委員名簿の作成を含む)
- (2) 治験依頼者に対する必要書類の交付と治験依頼手続きの説明
- (3) 治験依頼者及び治験審査委員会が審査の対象とする審査資料の受付
- (4) 治験審査結果報告書に基づく病院長の治験に実施に関する通知書の作成と治験依頼者及び治験責任医師への通知書の交付(治験審査委員会の審査結果を確認するために必要とする文書の治験依頼者への交付を含む)
- (5) 治験終了(中止・中断)報告書の受領及び治験終了(中止・中断)通知書の交付
- (6) 記録の保存
- (7) 治験の実施に必要な手続きの作成
- (8) その他治験に関する業務の円滑化を図るために必要な事務及び支援
- 2 治験事務局は、治験審査委員会委員長の指示により、次に掲げる業務を行うものとする。
- (1) 治験審査委員会の開催準備
- (2) 治験審査委員会の審議等の記録(審議結果及び採決に参加した委員の名簿を含む)の作成
- (3) 治験審査結果報告書の作成及び病院長への報告
- (4) 治験審査委員会で審議の対象とした資料、議事録、治験審査委員会が作成した資料等、その他の必要な資料等の保存
- (5) その他治験審査委員会に関する業務の円滑化を図るために必要な事務及び支援
第4章 治験薬管理者
第11:治験薬管理者の業務
- 第11 治験薬管理者は次に掲げる業務を行う。
- (1) 治験薬を受理し、治験薬受領書を発行する。
- (2) 治験薬の保管、管理及び払い出しを行う。
- (3) 治験薬の管理表及び治験薬出納表を作成し、治験薬の使用状況及び治験進捗状況を把握する。
- (4) 被験者からの未服用治験薬の返却記録を作成する。
- (5) 治験実施計画書に規定された量の治験薬が被験者に投与されていることを確認する。
- (6) 未使用治験薬を治験依頼者に返却し、未使用治験薬返却書を発行する。
- (7) その他、治験依頼者が作成した手順書に従う。
- 2 治験薬管理者は、治験が終了(又は中止・中断)した場合には、治験薬管理表の(写)を作成し、治験責任医師に送付するものとする。(ただし、治験責任医師が当該治験薬の治験薬管理者となった場合を除く。
第5章 治験責任医師
第12:治験責任医師等の要件
- 第12 治験責任医師は、本院に所属する常勤医師とする。
- 2 治験責任医師は、教育・訓練及び経験(治験と関係のある専門学会の認定医あるいは評議員であり、臨床経験が10年以上であること)によって、治験を適正に実施し得る者でなければならない。
又、治験責任医師は、このことを証明する最新の履歴書「治験責任医師履歴書」を、治験依頼者に提出するものとする。 - 3 治験責任医師は、治験依頼者と合意した最新の治験実施計画書、最新の治験薬概要書、製品情報及び治験依頼者が提供するその他の文書に記載されている治験薬の適切な使用方法を十分精通していなければならない。
- 4 治験責任医師は、GCP等を熟知し、これを遵守しなければならない。
- 5 治験責任医師は、治験依頼者によるモニタリング及び監査並びに治験審査委員会及び国内外の規制当局による調査を受け入れなければならない。治験責任医師は、モニター、監査担当者、治験審査委員会又は国内外の規制当局の求めに応じて、全ての治験関連記録を直接閲覧に供しなければならない。
- 6 治験責任医師は、合意された募集期間内に必要数の適格な被験者を集めることが可能であることを、 履歴書中において過去の実績等により示さなければならない。
- 7 治験責任医師は、合意された期間内に治験を適正に実施し、終了するに足る時間を有していなければならない。治験責任医師は、履歴書中において主たる業務地(本院)及び従たる業務地(非常勤先)における自身が有する診療時間等により、これを証するものとする。
- 8 治験責任医師は、治験を適正かつ安全に実施するため、治験の予定期間中に十分な数の治験分担医師及び治験協力者等の適格なスタッフを確保でき、また適切な設備を利用できなければならない。
- 9 治験責任医師は治験関連の重要な業務の一部を治験分担医師又は治験協力者に分担させる場合には、 「治験スタッフリスト」を作成し、予め病院長に提出し、その指名を受けなければならない。
- 10 治験分担医師は、本院に所属する常勤医師、非常勤医師とする。
ただし、非常勤医師を治験分担医師とする場合は、任用期間が当該治験を担当するのに十分であること。 - 11 治験責任医師は、治験分担医師を置く場合には、当該治験分担医師が治験を適正に実施し得る者であることを証明する最新の履歴書を、治験依頼者に提出するものとする。
- 12 治験協力者は、本院に常勤医師として採用されている者、及び本院に常勤として採用されている薬剤師、看護婦、検査技師、また、当院と契約したCRCとする。ただしこれらは、当該治験に限りその役割を負うものとする。
- 13 治験責任医師は、治験分担医師、治験協力者等に、治験実施計画書、治験薬及び各人の業務について十分な情報を与え、指導及び監督しなければならない。
第13:治験責任医師の業務
- 第13 治験責任医師は、治験実施計画書の被験者の選択・除外基準の設定及び治験を実施する際の個々の被験者の設定に当たっては、人権保護の観点から及び治験の目的に応じ、健康状態、症状、年齢、性別、同意能力、治験責任医師との依存関係、他の治験への参加の有無等を考慮し、治験に参加を求めることの適否を慎重に検討すること。
- 2 治験責任医師は、同意能力を欠く者については、当該治験の目的上、被験者とすることがやむを得ない場合を除き原則として被験者としないこと。
- 3 治験責任医師は、社会的に弱い立場にある者を被験者とする場合には、特に慎重な配慮を払わなくてはならないこと。
- 4 治験責任医師は、治験実施計画書及び症例報告書について、治験依頼者と合意する前に、治験依頼者から提供される治験実施計画書案、症例報告書案及び最新の治験薬概要書、その他必要な資料・情報に基づき治験依頼者と協議し、当該治験を実施することの倫理的及び科学的妥当性について十分検討すること。
- 5 治験責任医師は、治験実施の申請をする前に、治験依頼者の協力を得て、被験者からの治験の参加に関する同意を得るために用いる同意説明文書及びその他の説明文書を作成すること。なお、同意説明文書は同意文書と一体化させ、診療録保存用、治験事務局確認用、及び患者控の3枚複写式としたものとする。(以下同意説明・同意文書という。)
- 6 治験責任医師は、治験実施前及び治験期間を通じて、治験審査委員会の審査の対象となる文書のうち、治験責任医師が提供すべき文書を最新のものとすること。
- 7 治験責任医師は、治験依頼の申し出があった場合、治験依頼者との合意を行った後、病院長に治験実施の申請をすること。
- 8 治験責任医師は、治験審査委員会が治験の実施又は継続を承認し、又は何らかの修正を条件に治験の実施又は継続を承認し、これに基づく病院長の指示、決定が文書で通知された後に、その指示、決定に従って治験を開始又は継続しなければならない。又は、治験審査委員会が実施中の治験に関して承認した事項を取消し(治験の中止又は中断を含む)、これに基づく病院長の指示、決定が文書で通知された場合には、その指示、決定に従うこと。
- 9 治験責任医師は、治験審査委員会が当該治験の実施を承認し、これに基づく病院長の指示、決定が文書で通知される前に、被験者を治験に参加させてはならない。
- 10 治験責任医師は、治験実施計画書を遵守して治験を実施すること。
- 11 治験責任医師は、承認された治験実施計画書を遵守した方法、並びにこれに基づき作成せれた本院の処方せんでのみ治験薬を投与若しくは使用すること。
- 12 治験責任医師は、治験薬の正しい使用方法を各被験者に説明、指示し、当該治験薬にとって適切な 間隔で、各被験者が説明された指示を正しく守っているか否かを確認すること。
- 13 治験責任医師は、実施中の治験において少なくとも年1回、病院長に治験実施状況報告書を提出するとともに、治験の継続の可否について病院長の指示を受けること。
- 14 治験責任医師は、治験の実施に重大な影響を与え、又は被験者の危険を増大させるような治験のあらゆる変更について、治験依頼者及び病院長に速やかに報告書を提出するとともに変更の可否について病院長の指示を受けること。
- 15 治験責任医師は、治験実施中に重篤な有害事象が発生した場合は、重篤で予測できない副作用を特定した上で、速やかに病院長及び治験依頼者に文書で報告するとともに、治験の継続の可否について病院長の指示を受けること。
- 16 治験責任医師は、治験実施計画書の規定に従って正確な症例報告書を作成し、記名捺印又は署名し、治験依頼者に提出すること。また治験分担医師が作成した症例報告書については、それらが治験依頼者に提出される前にその内容を点検し、問題がないことを確認した上で記名捺印又は署名するものとする。いずれの場合においても、記載内容の修正等を行う場合には、治験依頼者から提供される手引きによらなければならない。
- 17 治験責任医師は、治験終了後、速やかに病院長に治験終了(中止・中断)報告書を病院長に提出すること。なお、治験が中止又は中断された場合においても同様の手続きを行うこと。
第14:被験者の同意の取得
- 第14 治験責任医師及び治験分担医師は、被験者が治験に参加する前に、被験者に対して、同意説明・同意文書及びその他の説明文書を交付して十分に説明し、治験への参加について自由意志による同意を文書により得るものとする。
- 2 同意説明・同意文書には、説明を行った治験責任医師又は治験分担医師、被験者が記名捺印又は署名し、各自日付を記入するものとする。なお、治験協力者が補足的な説明を行った場合には、当該治験協力者も記名捺印又は署名し、日付を記入するものとする。
- 3 治験責任医師又は治験分担医師は、被験者が治験に参加する前に、前項の規定に従って記名捺印又は署名と日付が記入された同意説明・同意文書の患者控を(その他の説明文書がある場合は当該説明書を含む)被験者に渡さなければならない。また、被験者が治験に参加している間に、同意説明・同意文書及びその他の説明文書が改訂された場合は、その都度新たに前項の規定に従って記名捺印又は署名と日付を記入した同意説明・同意文書の患者控を(その他の説明文書がある場合はそれと共に)被験者に渡さなければならない。
- 4 治験責任医師、治験分担医師及び治験協力者は、治験への参加又は治験への参加の継続に関し、被験者に強制したり又は不当な影響を及ぼしてはならない。
- 5 同意説明・同意文書、その他の説明文書並びに説明に関して口頭で提供される情報には、被験者に権利を放棄させるかそれを疑わせる語句、又は治験責任医師、治験分担医師、治験協力者、医療機関、治験依頼者の法的責任を免除するかそれを疑わせる語句が含まれていてはならない。
- 6 口頭、同意説明・同意文書、及びその他の説明文書による説明には、被験者が理解可能で、可能な限り非専門的な言葉が用いられていなければならない。
- 7 治験責任医師又は治験分担医師は、同意を得る前に、被験者に質問をする機会と、治験に参加するか否かを判断するのに十分な時間を与えなければならない。その際、当該治験責任医師、治験分担医師又は補足的説明者としての治験協力者は、全ての質問に対して被験者が満足するよう答えなければならない。
- 8 被験者の同意に関連し得る新たな重大な情報が得られた場合には、治験責任医師は、速やかに当該情報に基づき同意説明・同意文書を改訂し、予め治験に参加するか否かについて被験者の意思を確認するとともに改訂された同意説明・同意文書を用いて改めて説明し、治験への参加の継続について被験者から自由意志による同意を文書で得なければならない。なお、重大な情報には、第6第1項第2号のニに掲げるものが含まれるものとする。
- 9 治験に継続して参加するか否かについての被験者の意思に影響を与える可能性がある情報が得られた場合には、治験責任医師又は治験分担医師は、当該情報を速やかに被験者に伝え、治験に継続して参加するか否かについて被験者の意思を確認しなければならない。この場合、当該情報が被験者に伝えられたことを文書に記録しなければならない。
- 10 被験者の同意取得が困難な場合、非治療的治験を実施する場合、緊急状況下における救命的治験の場合及び被験者が同意文書等を読めない場合については、厚生省GCP答申7-2-2、7-2-3、7-2-4及び7-2-5を遵守する。
第15:被験者に対する医療
- 第15 治験責任医師は、治験に関連する医療上の全ての判断に責任を負うものとする。
- 2 病院長及び治験責任医師は、被験者の治験参加期間中及びその後を通じ、治験に関連した臨床上問題となる全ての有害事象に対して、十分な医療が提供されていることを保証するものとする。また、治験責任医師又は治験分担医師は、有害事象に対する医療が必要となったことを知った場合には、被験者にその旨を伝えなければならない。
- 3 治験責任医師又は治験分担医師は、被験者に他の主治医がいるか否かを確認し、被験者の同意のもとに、他の主治医に被験者の治験への参加について知らせなければならない。
- 4 被験者が治験の途中で参加を取り止めようとする場合、又は取り止めた場合には、被験者はその理由を明らかにする必要はないが、治験責任医師又は治験分担医師は、被験者の権利を十分に尊重した上で、その理由を確認するために適切な努力を払わなければならない。
第16:治験実施計画書からの逸脱
- 第16 治験責任医師又は治験分担医師は、治験責任医師が治験依頼者との事前の文書による合意及び治験審査委員会の事前の審査に基づく文書による承認を得ることなく、治験実施計画書からの逸脱又は変更を行ってはならない。ただし、被験者の緊急の危険を回避するための医療上やむを得ないものである場合又は治験の事務的事項のみに関する変更である場合には、この限りではない。
- 2 治験責任医師又は治験分担医師は、承認された治験実施計画書から逸脱した行為を全て記録しなければならない。治験責任医師は、その理由等を説明した記録を作成して治験依頼者に提出し、その写を保存しなければならない。
- 3 第1項ただし書きに定める変更を行った場合、治験責任医師は、逸脱又は変更の内容とその理由を病院長に提出し、指示を得るものとする。なお、治験実施計画書の改訂が適切な場合にはその案を可能な限り早急に病院長に提出して了承を得るとともに、病院長を経由して治験依頼者の合意を文書で得なければならない。
第6章 その他
第17:読替え規定
- 第17 医薬品の再審査申請、再評価申請等の際提出すべき資料の収集のための製造販売後臨床試験を行う場合には、本手順書において、「治験」とあるのを「製造販売後臨床試験」と読み替えるものとする。
附則
本業務手順書は平成10年4月1日より適用する。
- 平成14年10月1日改定
- 平成16年12月1日改定
- 平成17年10月4日改定
- 平成18年4月1日改定